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 第8回:徒然なる心 byもも


  私の好きな作家は宮本輝氏なんですが、宮本氏の小説を読むと必ずといって

  いいほど、線を引きたくなるくらいの(実際にはしていませんが)言葉や文章が

  出てきます。 これまでもたくさんの感銘を受けてきました。

  今回も、「約束の冬」という小説の中で、私の考えは少し間違っていたなと

  思わせる内容が出てきたので、ひとりごとを聞いてください。

  
  話の中に「徒然草」が出てきます。第百五十段らしいのですが、私の頭には

  「つれづれなるままに、日くらし、硯にむかひて…」

  くらいしか記憶にないのがなんとも情けない(;´д`)



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  「徒然草」 第百五十段

  〜能をつかんとする人、「よくせざらんほどは、なまじひに人に知られじ。
  うちうちよく習ひ得て、さし出でたらんこそ、いと心にくからめ」と常に言ふめれど、
  かく言ふ人、一芸も習ひ得ることなし。
  未だ堅固かたほなるより、上手の中に交りて、毀り笑はるゝにも恥ぢず、つれなく
  過ぎて嗜む人、天性、その骨なけれども、道になづまず、濫りにせずして、
  年を送れば、堪能の嗜まざるよりは、終に上手の位に至り、徳たけ、人に
  許されて、双なき名を得る事なり。
  
  天下のものの上手といへども、始めは、不堪の聞えもあり、無下の瑕瑾もありき。
  されども、その人、道の掟正しく、これを重くして、放埒せざれば、世の博士にて、
  万人の師となる事、諸道変るべからず。 〜

  現代語訳

  〜芸能を身につけようとする人は、「よくできないような時期には、なまじっか人に
  知られまい。内々で、よく習得してから、人前に出て行くようなのこそ、まことに
  奥ゆかしいことだろう」と、いつも言うようであるが、このように言う人は、一芸も
  習得することができない。
  まだ、まったくの未熟なうちから、上手の中にまじって、けなされても笑われても
  恥ずかしいと思わずに、平然と押し通して稽古に励む人は、うまれついてその
  天分がなくても、稽古の道にとどこおらず、勝手気ままにしないで、月日を過ごせば、
  芸は達者であっても芸道に励まない人よりは、最後には、上手といわれる芸位に
  達して、人望も十分にそなわり、人に認められて、比類のない名声を得ることである。

  世に第一流といわれる一芸の達人といっても、初めは下手だという噂もあり、
  ひどい欠点もあったものである。けれども、その人が芸道の規律を正しく守り、
  これを重視して、気ままに振るうことがなければ、一世の模範となり、万人の師匠と
  なることは、どの道でも、かわりのあるはずがない。〜


  小説の一説

  「うまくできるようになってから、人前に出て仕事をしようと思うのは間違い
  なんじゃないかなぁ。
  失敗したから恥ずかしいとか、間違えたら安くみられるとか考えて、それが
  礼儀だとか、奥ゆかしいなんて自分に言い聞かせている人は、つまりは
  見栄っ張りで、勇気がないから、せっかく才があってもそれが育たない。
  徒然なる心は、そう言いたかったんだと思うんだけど…」 


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  まさに、私がそういう考えの持ち主なんです。

  何かをする時、特に報酬を貰う仕事の時は、

  「きちんとできるようになってからでないと周りに迷惑がかかる。

  だから、自分に自信がつくまでは、やらない…」と。

  それは当然のことであって、私の考えは正しいのだと、この小説を読むまで思い
 
  込んでいました。

  しかし、私とはまったく逆に、私の旦那さんは準備ができていなくても、とりあえず、

  なんでも行動に移す人なんです。

  そんな旦那さんを私は、「中途半端な商品を売るお店」のようだと思っていました。

  旦那さんが何かをしようとする度に「大丈夫なの?きちんとできるの?」と彼の

  出鼻を挫いてばかりいました。

  旦那さんにとって私は、かなり疎ましかったに違い有りません。

  私は、人によく思われたいという気持ちが強いのだと思います。それって自尊心?

  宮本氏の「天の夜曲」という小説の中にも、父親が息子に伝えるものに

  「自尊心以上に大切なものをもって生きろ」というようなフレーズがあったなぁ…。

  100%、私の考えが間違っているとは思いませんが、もう少し柔軟な態度で旦那さんに

  接していこうと、徒然なる心を産まれてはじめて噛み締めた一冊でした。






第1回:素晴らしい朝
第2回:なんだかな〜
第3回:宝物
第4回:知らぬが仏?
第5回:考えすぎかしら
第6回:働かない女
第7回:おばあちゃん
第8回:徒然なる心

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