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  第8回: ガンダーラ 人々はそれがインドにあると言います
by ヘクトパスカル



 来たりなば、芽生えてくれてウェルカム。おらが春がそら、人知れず。
何ともワンペア雁首揃えて、ブラフ(はったり)かますにゃヌルくねえ手札です。
風吹けば吹け水面下の白鳥、水を掻くその二つの脚すらも優雅に。
娑婆の空気もまんざらでねェと、角質層を突き破り・・・・・・


 或る朝、洗面台の寝惚けた鏡を覗き込むと、すわっ、何事?
首のホクロから毛が生えてました、ぐんぐんにるにる二本×1.2cm。 
 はんなり京都風に喉仏の右下ル在住のホクロ毛二本。
喉がぐるぅり一周メルカトル図法※で、ご存知日本が喉仏とするならば、
物件的にエロマンガ島※あたりかと。
 すいません男尊女卑の最たるもので喉の目印は喉仏です。頚椎の中で
潔白に座禅し続ける求道者に捧ぐ献花、あるいはアダムに林檎を差し出す
イヴのイチヂクの葉の部分に当たる、ともすれば母性愛をすら禁じえない
マイ スヰート リトル ホクロ毛。我愛(ウォー・アイ)黒子毛。

「見てみな、あの人のホクロ。何だか寂しげだぜ。」
「初めてなのに、懐かしいホクロ。遠いあの日を思い出すわ。」
「わー、パパ。あの人、子供の日でもないのに、どうして首に
ちっちゃな鯉のぼり飾ってるの?」
「お客さん、困りますよ。ウチ食べ物屋なんだから。何って、その首の。
え?エアコンに棚引くホクロ毛?あたしゃてっきりゴキブリかと・・・」

 市井(しせい)の人々は、ワタクシの思う程にホクロ毛なんかにゃ時間を
割いちゃ呉れませんが、ワタクシがホクロ毛陰性の頃なんか、ホクロ毛陽性の人を
見る度にノスタルジックな気持ちになり、その人のセピア色の原風景を
デッチ上げたりしたものです。夕焼けだの、校舎だの、ニキビだの、素振りだの。
そうしていつも思うのです。体毛が外部刺激から身を守る術(すべ)とするならば、
豪放磊落な耳毛・シナ垂レ眉毛と並び、曰く過剰防衛である、と。
今となっては、ワタクシも追う立場から追われる身の上に成り下がりですよ。
同ホクロ毛相憐れむ。云わばシンパシー・フォー・ザ・ホクロ毛※。

 黒子毛ほくろ毛と連呼するあまり、視覚的イメージがマクロに毛で埋め尽くされ、
「ヤダ、わさわさ。気持ち悪い。」といった心持ちを助長する事態に憂慮を、
いやね、考えてもみて下さいよ、あなたの夢が創り上げた完璧無比な男性女性、
牛肉で謂うところの霜降り異性、さぞかし垂涎(すいぜん)のビジョンでもって
創り上げられた偶像に、その心の中の小箱に大切に仕舞われた慈しむべき対象に、
そッとよじれたホクロ毛を加味願いますよ。つぶらな瞳、白い歯、ホクロ毛。
その途端にステテコに腹巻き姿、喜劇王演じるところのヘンなオジサンですよ。
百年の恋もおポンチ色に染まりますよ。うっへぇウンジャラゲ。
 
 いや、ワタクシがそういった大それた存在振舞う気は毛頭無く、
肝要なのはホクロ毛という記号の威力、やんわり侮蔑をもたらす触媒、
そう、金の延べ棒を沢庵に、ブランド香水を椎茸のダシ汁に、チェスの駒を
かりんとうにまで堕する程のゴシップ性をもつホクロ毛を持て余し、
ただ喉仏様のお膝元、霊験あらたかであろうワタクシのホクロ毛に限って、
「天竺(てんじく)」と呼ぶ事をご了承下さい。可愛いのは我が身です毛です。

 もし困難に喘ぐなら、差し上げても良ろしくてよ、有り難い経典。
垂らして上げてもよろシクテよ、蜘蛛の糸。手のひらから。
あ`'、嫌ギリギリ。過ぎるオイタが輪っかの形で頭にメリメリ。
皆々様、戒めのお経を唱えるのは何トゾ御勘弁。足りないサルの戯れ言です。
何せ如意棒二本が嬉し恥ずかしくて。


※メルカトル図法・・・世界地図の図法のひとつ。ほかにモルワイデ図法、
           正距方位図法等々あり。

※エロマンガ島・・・・第二次性徴覚えたて男子中学生の通過儀礼的存在。
           全国中学校の図書室にある詳細世界地図の
           恐らく一番手垢のついたページに載ってます。
           大雑把にニュージーランドの北あたり。

※シンパシー〜・・・・ローリング・ストーンズの往年の名曲に「Sympathy
           for the Devil(悪魔を憐れむ歌)」というのが
           ありまして、まあソレです。ごめんジャガー。






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第3回:土俵がいっぱいに詰まってるっす ごっつあん、の二
第4回:米俵から緑の汁があふれてるっ ううぷす ごっつあん、の三
第5回: 夏の夜は汗ばんで張り詰めて眠れなくてああヤ
第6回: 遺伝子組替え劣性頭痛伝達
第7回:マジカルミステリー ツールド アリマ
第8回: ガンダーラ 人々はそれがインドにあると言います
第9回: めばえ まびき
第10回: 繊細な感情の琴線に、ぶっとい指で、ポチっとな
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